【エール】裕一が「どん底まで落ちた」と自分の事言っちゃうのは微妙だね…

エールまとめ(新)

【エール】裕一、智彦、久志…それぞれの戦後

朝ドラ「エール」は第100話を終え、登場人物たちが抱えた戦争の苦しみから脱却したようです。

裕一、智彦、久志の戦後の歩みを振り返って、私の思ったことを綴っています。

「どん底」を経験した3人の男たち

朝ドラ「エール」は第100回目の放送を終えた。

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戦後、3人の男に焦点があてられた。

3人ともが「どん底に、地面あり」を体現した、そんなお話だった。

1人目はもちろん裕一(窪田正孝)。

戦時歌謡を作り、戦争に協力し、若者を戦地に送り出していたことに責任を感じていた裕一は、音楽から離れていた。

自分の曲に影響されて戦地に行く若者をみて興奮していたことへの罪悪感が裕一を苦しめた。

その裕一を助けたのは池田二郎(北村有起哉)であった。

裕一が完全復活を遂げることになったのは、永田医師(吉岡秀隆)の言葉の力に寄るものだった。

『長崎の鐘』を作る為に訪れた長崎で、裕一はなぜ曲を作るのか、その思いを確認することができた。

裕一は人々を応援したいから曲を作り続けてきた、その思いはずっと変わっていなかった。

2人目は智彦(奥野瑛太)。

軍人だった彼が、ラーメン屋の大将へと道を変えていく様子は大変に胸を打った。

軍人の誇りを捨てない智彦は、過去の栄光にしがみつく小さな男だと思った。

しかし、智彦の誇りは、違っていた。

吟「昔ね、裕一さんが迷ってる時、軍人は人のためだから命を懸けて戦えるって、あなた言ったの。 あなたの誇りは、軍人である誇りじゃない。人のために命を燃やせるのがあなたの誇り。そう信じて、私はあなたについてきました。 」

(エール第96話)

吟が思い出させてくれたのは、「人のために命を燃やせる」という智彦の誇り。

その誇りを胸に、智彦は吟と戦災孤児のケンの3人で歩きだす決心をした。

そして3人目が佐藤久志(山崎育三郎)。

彼は、農地改革により土地を失い、そのまま父を亡くした。父の葬儀中、親戚たちの言葉に久志は傷ついた。

久志が歌手で会ったことが父に苦労を負わせていた、戦時歌謡を歌った久志は戦犯だ、と語る親戚たち。

父を苦しめた歌手の自分を否定し、どう生きていったらいいのか分からなくなった久志…。

父の1回忌には誰も訪れない…人間不信にもなるわ。

しかし、裕一の真の友情に触れ、そして歌手の自分に対する裕一からの信頼を知り、気持ちに変化が訪れた。

それでも最後の一歩を踏み出せない久志に、裕一はこう言った。

「戦時歌謡に君を誘った。 久志、苦しませてしまって本当に申し訳なかった。 僕もどん底まで落ちた。 どん底まで落ちた僕たちにしか伝えられないことがある。」

(エール第100話)

そして久志は歌いだした。苦しみを乗り越えた者にだけが伝えられる希望をのせて、『栄冠は君に輝く』を歌った。

3人の男たちの、戦後の歩み方はそれぞれで、とても感動的だった。

それぞれが「どん底」に落ちたからこそ、未来を見ることができた。

どん底に落ちなかったら、裕一の曲は生まれなかっただろうし、智彦はケンとともに歩む道を選ばなかっただろう。久志は裕一の真の友情と信頼に気付くことなく、歌うことができなかったかもしれない。

とても、感動的な話だったので、水を差したくないが、差してしまうのが私だ…。

こんなこといったってしょうがないんだけど、戦後の「どん底」って、こんなものなんだろうか。

永田医師の「どん底に地面あり」のメッセージは強いものだった。

永田医師がある若者にこう言った。

「落ちろ、落ちろ、どん底まで落ちろ」

(エール第94話)

これは、焦土と化した長崎を見た若者に言った言葉だ。

その若者がその後どうなったかは知らないが、裕一のどん底とその若者のどん底は種類が違うように感じる。

裕一の苦しみは、一般人には想像し得ない、スケールの大きい苦しみだ。

けれど、裕一は、家も家族も失い、明日をどう生きたらいいのか分からないという苦しみは抱えたことがない。

食糧難と言われた戦争直後も食うものにも住むところにも困らず、時計いじりを続ける余裕のある暮らしぶりをしていた。

安心安全な生活が確保された上での精神的苦しみを、「どん底」と 表現されても…と引いてみてしまう私がいた。

しかし第99話までの裕一は自分自身を「どん底に落ちた」と表現したことはなかったと思う。だから良かったのだ。

なのに、第100話でとうとう自分で言っちゃったんだ。「僕もどん底まで落ちた」って…。

なんていうか、コレを裕一が自分で言っちゃうのを聞くと興ざめしてしまったんだよね…。

いやいや、”どん底”といえば確かにそうだけど。でもさ、生活は何一つ不自由してなかったじゃん!って思ってしまうよね。

久志に伝えたかった気持ちは分かる。分かるんだけど、「どん底まで落ちたんだぞ」って裕一が自分で言うのも滑稽な気がするなぁ。

裕一のこの言葉のせいで、久志までが「どん底まで落ちた男」と名乗ったかのようになってしまうので、そこが残念だ。

久志だって、アル中寸前でどん底感半端なかったけど、やっぱり戦後の”どん底”には足りないような感じ…。

戦争には行かなかったから戦場での地獄は見ていない、農地改革で色々失ったけど、実家超キレイだったじゃん。

結局私は、ケンと吟と新たな一歩を踏み出した智彦に一番感情移入していた。

落ち込んで、酒飲んで、お金なくなって、「やってやるか」と始めたラーメン屋の皿洗い。そのラーメン屋に「人のために命を燃やす」誇りを見つけたなんて、カッコいいじゃないか。

ちょうど良い区切りの第100話目で、それぞれの戦争にも区切りがついた。

色々言ってはいるけれど、これからのエールも楽しみだ。

星影のエール

 

 

 

最後まで読んで下さりありがとうございました♪

   

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